オープンソースで開発されている、Fuegoという囲碁思考エンジンを最近知ったのですが、このソフト、KGSで2kというかなりの実力らしいので、気になってちょっと調べてみました。
Fuego
http://fuego.sourceforge.net/
Fuegoは、GUIを持たないテキストベースのシンプルなコマンドですので、普通に対局しようとする場合は、別途GTPに対応したGUIフロントエンドが必要になります。
まずはヘルプ。
$ fuego -help
Options:
-config file execute GTP commands from file before
starting main command loop
-help display this help and exit
-maxgames n make clear_board fail after n invocations
-nobook don't automatically load opening book
-nohandicap don't support handicap commands
-quiet don't print debug messages
-size initial (and fixed) board size
-srand set random seed (-1:none, 0:time(0))
Fuegoは起動すると常に、GNU Goに--mode gtpオプションを付けた時と同じような、GTPな状態になります。囲碁のルールや強さ(考慮時間)などは、起動時のオプションで指定することができないようですが、起動後、GTPコマンドでFuegoに教えることができます。
囲碁のルールは、go_rulesコマンドで変更できます。いわゆる日本ルールにする場合は
go_rules japanese
とします。引数は他にもchinese、cgos、kgsがあり、デフォルトはchineseを指定したのと同じ状態になっているのですが、このchineseを指定した時のコウのルールは、スーパーコウルールとなっています。もしこのコウのルールだけを変更したい場合は、go_param_rulesコマンドを使って
go_param_rules ko_rule simple
のようにします。
go_param_rules
と引数を取らなければ、現在設定されているルールを詳細に表示します。
強さは、考慮時間を変更するtime_settingsコマンドを使って変更できます。たくさん考えさせると、その分強くなります。例えば
time_settings 0 30 1
とすると、一手30秒で考えるようになります。と言いたいところなんですが、バグっているのかなんなのか、この指定ではなぜだかデフォルトよりも大幅に早く手を返してきてしまいます。次のような指定は、うまくいくようです。意味は一局1000秒です。
time_settings 1000 0 0
time_settingsコマンドの詳しい使い方は、こちらのGTPの仕様を見てみてください。
ただ、GUIフロントエンドからFuegoを使う場合に、こういったGTPコマンドが送れなかったり、仮に送れても手間が掛かって面倒なことが多いと思います。そういう場合のために、起動時に実行したいGTPコマンドを記述したコンフィグファイルを用意し、そのファイルを-configオプションを使って読み込ませることができます。例えば、次のような内容のファイルを用意します。
go_rules japanese
time_settings 1000 0 0
そして、GUIフロントエンドの設定では次のようにします(今回はコンフィグファイル名をfuego.confとしました。path/to/は適宜変更してください)。
path/to/fuego -config path/to/fuego.conf
これで、日本ルールで一局1000秒考えるFuegoと対戦できます。
Fuegoには、終局後、対局結果を調べる機能がありますが(final_scoreコマンド)、正確でなかったり結果を返してこないことがたまにあるようですので、この機能を使って目数などの対局結果を表示するGUIフロントエンドを使う時は注意してください。なんかおかしいなと思ったら、自分で数えた方がいいかもしれません。ちなみに、GNU Goはこのあたりけっこうしっかりしていて、ほとんど間違うことはありません。
ということで、Fuegoの使い方はだいたい分かりましたので、今度はGNU Goと対戦させてその実力を調べてみたいと思います。本当はMoGoとさせたかったんですが、なぜか頻繁にエラーが出て止まってしまいうまくいきません(しかも、その後PCの調子が明らかにおかしくなる…)。原因がはっきりしなくて気持ちが悪いのですが、よく分からないので今回は諦めました。
対局に使用したFuegoとGNU Goは、どちらともこちらのサイトからダウンロードしてきました。Fuegoはバージョン0.3.1、GNU GoはMinGW版の3.7.13。両方のソフトとも基本的にデフォルトのままですが、日本ルールのときはFuegoに
go_rules japanese
とGTPコマンドを送り、中国ルールの時はGNU Goに--chinese-rulesオプションを付けました。使用したPCのOSはWindows XP、CPUはAthlon X2 BE-2400。連続対戦させるために、GoGuiに入っていたgogui-twogtpというソフトを使いました(このソフト、最終的な結果をHTMLファイルにまとめることができたりと、めちゃくちゃ便利です)。それぞれの条件ごとに、先後を換えて20局ずつ計40局。コミは6目半です。対局中に他の作業もしていましたので、消費時間や強さに影響が出ている可能性もあります。カッコ内は、一局あたりの平均消費時間です。
9路盤 |
日本ルール |
Fuego(159sec) 35勝 – 5勝 GNU Go(16sec) |
19路盤 |
日本ルール |
Fuego(1016sec) 14勝 – 26勝 GNU Go(261sec) |
9路盤 |
中国ルール |
Fuego(163sec) 36勝 – 4勝 GNU Go(16sec) |
19路盤 |
中国ルール |
Fuego(1049sec) 29勝 – 11勝 GNU Go(257sec) |
とりあえず、9路盤での強さは本物ですね。GNU Goが相手では、どれくらい強いのかがよく分からないレベルです(笑)。19路盤はちょっと微妙… ただ、時間を増やせばまだまだ強くなりそうな感じはします。それから、他のモンテカルロな囲碁ソフトと同じく、デフォルトの中国ルールの方がだいぶ得意なようです。でも、日本ルールでもそれなりに打てるのはすばらしい。ちなみに、MoGoなどと同じく、「半目勝ちか中押し負け」な対局結果がすごく多かったです。
一応、少しだけ採れたMoGoとの棋譜も置いておきます。4局とも、中国ルールの9路盤。MoGoは--9オプションを付けただけです。時間はMoGoがFuegoの2倍弱ほど使っていました。これだけの対局数ではどちらがどれくらい強いのかはっきりしたことが分かりませんが、とにかくやっぱりMoGoは強いです。
[黒]Fuego vs [白]MoGo : 白(MoGo)中押し勝ち
[黒]Fuego vs [白]MoGo : 白(MoGo)中押し勝ち
[黒]MoGo vs [白]Fuego : 白(Fuego)中押し勝ち
[黒]MoGo vs [白]Fuego : 黒(MoGo)中押し勝ち
[以後の関連記事] : MoGoとFuegoを対戦させてみた
[追記]
コメントで教えていただいたんですが、一手あたりの考慮時間はgo_paramコマンドでtimelimitパラメータを変更するといいようです。一手30秒で考えるようにするには、
go_param timelimit 30
とします。
それからuct_param_searchコマンドでnumber_threadsパラメータを変更すると、マルチスレッドで動くようです。例えば、
uct_param_search number_threads 2
とすると、スレッド数が2になります。マルチコアなCPUを使用時は、この設定をぜひ試してみてください。
[追記]
ハードウェアにも依存するらしいのですが、スレッド数を変更したら、
uct_param_search lock_free 1
ともしたほうが良いそうです。難しくて私にはよく分かりませんが、この設定でLock-freeモードというのになります。
[追記]
GoGuiを使ってFuegoと対局する方法の解説ページを作ってみました。よかったら見てみてください。
http://www.perfectsky.net/fuego/index.html